サイエンス日本語版

日本語アブストラクト
13 February 2009 Volume323 Number5916

Reports

月周回衛星「かぐや(SELENE)」搭載地形カメラを用いて、月の裏側でマグマ噴出活動が長期継続していたことを明らかにした 注)SELENE:Selenological and Engineering Explorer(セレーネ/月の女神) Long-Lived Volcanism on the Lunar Farside Revealed by SELENE Terrain Camera Junichi Haruyama, Makiko Ohtake, Tsuneo Matsunaga, Tomokatsu Morota, Chikatoshi Honda, Yasuhiro Yokota, Masanao Abe, Yoshiko Ogawa, Hideaki Miyamoto, Akira Iwasaki, Carle M. Pieters, Noriaki Asada, Hirohide Demura, Naru Hirata, Junya Terazono, Sho Sasaki, Kazuto Saiki, Atsushi Yamaji, Masaya Torii, and Jean-Luc Josset 月周回衛星「かぐや(SELENE)」に搭載した地形カメラによる10m分解能の画像データを用いて、クレータ頻度分布を求め、これに基づき月の裏側の海の堆積物の年代を算定した。今回のデータによると、月の裏側では、海の堆積物を形成するマグマ噴出の多くは、約30億年前に活動を停止していた。この結果から、同年代に月全体で、海を形成するマグマ噴出活動が著しく減少したことが示唆された。しかし、月の裏側のあちこちに点在する海の堆積物の年代はもっと若く、約25億年前に集中していた。これは、月の裏側では、海を形成するマグマ噴出活動が従来考えられていたよりも長期間継続しており、また周期的に起きていた可能性があることを示している。 →英文アブストラクト

幻覚剤DMT(N,N-dimethyltryptamine)は内在性シグマ1受容体の制御因子である The Hallucinogen N,N-Dimethyltryptamine (DMT) Is an Endogenous Sigma-1 Receptor Regulator Dominique Fontanilla, Molly Johannessen, Abdol R. Hajipour, Nicholas V. Cozzi, Meyer B. Jackson, and Arnold E. Ruoho シグマ1受容体は中枢神経系や末梢組織に広く分布している。最初は、オピオイド受容体と誤認されていたが、シグマ1受容体は非常に多くの合成化合物に結合し、オピオイドペプチドには結合しないことから、現在はオーファン受容体とみなされている。シグマ1受容体のファーマコフォア(pharmacophore *)には、アルキルアミン核を持つ化合物が含まれ、内在性N,N-dimethyltryptamine(DMT)もアルキルアミン核を有する。DMTは幻覚剤として作用するが、標的受容体は不明であった。今回、DMTはシグマ1受容体に結合し、シグマ1受容体を発現している心筋細胞と異種性細胞の両方で、電位開口型ナトリウムイオンチャネルを阻害した。また、DMTは、野生型マウスにおいて過剰運動性を誘発したが、シグマ1受容体欠損マウスでは過剰運動性を誘発しなかった。これらの生化学的、生理的かつ行動学的実験により、DMTがシグマ1受容体の内在性アゴニスト(作動薬)であることが示された。 注) *:分子において受容体に認識され生物学的活性の原因となる一まとまりの構造的特徴。 →英文アブストラクト

利害が衝突した時の脳活動:妬みと“他人の不幸を喜ぶ感情”あるいは“他人の不幸は蜜の味”(schadenfreude)の神経基盤 When Your Gain Is My Pain and Your Pain Is My Gain: Neural Correlates of Envy and Schadenfreude Hidehiko Takahashi, Motoichiro Kato, Masato Matsuura, Dean Mobbs, Tetsuya Suhara, and Yoshiro Okubo 人はしばしば、社会的状況を踏まえて、自分と他人を比較して捉える。たとえば、特定の人物が自分より優れていると思えば嫉妬を感じ、妬んでいた人物が不幸な状況に陥ればあざ笑う。こうした妬みや“他人の不幸を喜ぶ感情”の認知神経科学的メカニズムを解明するために、今回われわれは、機能的MRI(fMRI)を用いた実験を2つ行った。検討1では、実験参加者に、比較対象とする人物(標的人物)の所有物や類似した(self-relevant)特徴について書かれた文章を読ませた。標的人物の所有物が多く、類似した特性も多いと実験参加者が認知した時に、強い妬みが生じるとともに前部帯状皮質(ACC)の強い活動が見られた。検討2では、妬みを感じた人物が不運に見舞われたと認知した時に、強い“他人の不幸を喜ぶ感情”が生じるとともに、線条体の強い活動が見られた。検討1のACCの活動から、検討2での腹側線条体の活動が予測され、2者の相関が見られた。これらの知見から、心の痛みといえる妬みの感情と心地よい反応である“他人の不幸は蜜の味”の神経基盤が明らかになった。 →英文アブストラクト

オーファンG蛋白質共役受容体3は、神経細胞におけるアミロイド-βペプチドの産生を調整する The Orphan G Protein–Coupled Receptor 3 Modulates Amyloid-Beta Peptide Generation in Neurons Amantha Thathiah, Kurt Spittaels, Marcel Hoffmann, Mik Staes, Adrian Cohen, Katrién Horré, Mieke Vanbrabant, Frea Coun, Veerle Baekelandt, André Delacourte, David F. Fischer, Dirk Pollet, Bart De Strooper, and Pascal Merchiers アミロイド-βペプチドの沈着は、アルツハイマー病に顕著な病理学的特徴である。今回、ハイスループットな(高処理)ゲノム機能解析スクリーニングにより、G蛋白質共役受容体3(G protein-coupled receptor 3:GPR3)という常時活性型オーファンGPRが、アミロイド-βの産生を調整する因子として同定された。GPR3を過剰発現させると、アミロイド-βの産生が促進された。一方、GPR3遺伝子を除去すると、in vitroおよびアルツハイマー病のマウスモデルにおいてアミロイド-βペプチドの蓄積が抑制された。Notchによるプロセッシング効果がない状況下でも、GPR3の発現によって、成熟型γ-セクレターゼの形成と細胞表面への局在化が増加した。GPR3は、正常ヒト脳のアルツハイマー病に関連付けられる部位で高い発現を示し、孤発性アルツハイマー病の脳において増加している。したがって、GPR3は、アルツハイマー病の治療のための治療標的となるであろう。 →英文アブストラクト

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