社会 > 患者さん・医療関係者の皆さまとともに 医療アクセス向上に関わる課題解決

世界にはいまだに治療方法が見つからない難病や、根治が難しい疾患が数多く残されています。特に開発途上国に蔓延するマラリア、結核、NTDsといった感染症については、市場性が見込めないことに起因し、治療薬の研究開発が進まないという現実があります。さらに、開発途上国においては、医療システムの不備や、貧困・災害なども、必要な医薬品や医療サービスが届かない原因となっています。
当社グループは、これら医療アクセスの課題について、「病と向き合うすべての人に、希望ある選択肢を。」というMISSIONのもと、当社の強みである創薬力を生かすとともに、NPO/NGO、業界団体など各種パートナーとも協力し、取り組んでいきます。

難病への取り組み

当社は、これまでに炎症性腸疾患や多発性硬化症といった難病に対して治療選択肢を生み出してきました。
これまで治療手段のなかった疾患に新たな選択肢を提供することは当社のMISSIONそのものです。特に中枢神経・免疫炎症領域のアンメット・メディカル・ニーズが残る疾患に対して、プレシジョンメディシンの実現をめざします。また、治療薬を起点に、予防から予後にかけてソリューションを提供し、患者さんとご家族のQOL向上に貢献していきます。
マテリアリティ・モニタリング指標において、新たに「難病・希少疾病に対する開発パイプライン数」を設定し、2021年度実績より開示しています。

治療薬の開発・提供

主な症状として進行性の筋萎縮と筋力低下が起こる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬としてエダラボンを開発し、日本の臨床試験結果を基に、日本、次いで韓国、米国、カナダ、スイスならびにその他のアジアの国々で承認を取得しました。
加えて、患者さんの負担軽減をめざしたエダラボン経口懸濁剤については、米国では2022年5月に承認取得、同年6月より販売を開始し、日本では2022年12月に承認取得、2023年4月より販売を開始しています。多くの患者さんにご使用いただくため、展開国の拡大に取り組み、カナダ、スイスにおいても承認を取得しました。さらに、患者さんとご家族の生活の質向上に資するアラウンドピルソリューションの提供をめざした取り組みも行っています。

エダラボン経口剤の承認とALS患者さんへの治療支援

これまで、ALS適応のエダラボンの投与経路は点滴静注に限られていましたが、注射による痛みや投与のための通院・入院といった患者さんの負担を軽減することで、治療のみならずQuality of Life(生活の質)の向上にも寄与することをめざし、新たな治療選択肢として経口投与できる内用懸濁液を開発しました。エダラボンの内用懸濁液は、2022年5月に米国にて承認を取得し、その後はカナダ(11月)、日本(12月)、スイス(2023年5月)においても承認を取得しました。
2023年3月には、当社の経口剤開発・承認取得までの道のりや、ALS治療における栄養管理を支援する情報提供等の取り組みについて、ビジネスニュースメディア「Business Insider Japan」にてご紹介いただいています。(https://www.businessinsider.jp/post-265047)

新たな取り組み

日光を浴びることによって痛みを伴った皮膚症状がみられる赤芽球性プロトポルフィリン症およびX連鎖性プロトポルフィリン症に対する新しい治療選択肢として、デルシメラゴンを開発中です。また、この薬剤は希少疾患である皮膚や内臓の硬化を特徴とする全身性強皮症に対する治療薬としても、臨床試験を2021年に開始しました。

今後もMISSIONの実現をめざして研究開発に取り組み、難病と闘う世界の多くの患者さんとご家族に希望ある選択肢を届けることによって、健康で持続可能な社会の実現に貢献していきます。

グローバルヘルス

開発途上国に蔓延する感染症の制圧は、人々の生活環境の改善、そして貧困の脱却につながり、開発途上国のみならず地球全体に好循環を生み出します。当社は創薬型企業として、強みである創薬力を生かすことが最も貢献できる手段であると考え、GHIT Fundを通し、感染症治療薬の研究に取り組んでいます。また、薬剤耐性菌に対する新規抗菌薬の創製に向けた非営利団体との共同研究、開発途上国における知的財産上の配慮やNPO/NGOへの寄付等を通じた各種支援も行っています。

グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)への参画

グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)は、開発途上国の人々を苦しめるマラリア、結核、顧みられない熱帯病(NTDs)などの感染症に対する新薬創出を促進するために設立された日本初の官民パートナーシップです。
当社はグローバルヘルスに貢献するというGHIT Fundの趣旨に賛同し、GHIT Fundへの資金拠出を行っています。その一方で、GHIT基金から資金提供を受けて、パートナーとともに途上国に蔓延する感染症治療薬の研究に取り組んでいます。
特に、以下に紹介するマラリアとNTDsの根絶は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の17の目標に紐づく169のターゲットのひとつに掲げられています。医療アクセスの向上は当社のマテリアリティでもあり、より積極的に推進していきます。

Medicines for Malaria Venture(MMV)との共同研究

抗マラリア薬の研究機関であるMedicines for Malaria Venture(MMV)に対し、当社の医薬品化合物ライブラリー(5万化合物)を提供し、医薬品になる可能性のある3種類の有望なヒット化合物を同定することができました。さらに共同研究を進め、このうちの1つより、新規抗マラリア薬候補となる2種類のリード化合物を取得しました。2019年4月より次のステージに移り、開発候補化合物創製をめざして、引き続きMMVと連携して研究を進めていきます。

Drugs for Neglected Diseases initiative(DNDi)との共同研究

非営利の医薬品開発に取り組む国際的な組織である「顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ」(Drugs for Neglected Diseases initiative(以下「DNDi」)とともに、シャーガス病およびリーシュマニア症を標的としたリード化合物の創薬研究を、2021年4月より開始しました。当社とDNDiは、これらの疾患に対する化合物探索スクリーニングを2019年9月より実施し、9種のヒット化合物群の取得に成功しました。得られたヒット化合物群は創薬の次のステップとなるリード化合物探索へ進む基準を満たしたため、リードステージの基準を満たす化合物の取得を2年間のプロジェクトの最終目的として設定しています。

医療へのアクセスが困難な国における特許

当社グループでは、新たな医療機会を提供するための基盤として、知的財産ポリシーを定め、グローバルに競争力ある知的財産を適切に保護し、有効に活用しています。一方、深刻な経済的課題により医療アクセスが困難な国では、特許の権利行使に配慮する必要があると考えます。当社グループは世界中の貧困地域での医療アクセスに資するため、原則として、国連の定める後発開発途上国(LDC)においては、特許権を行使していません。

詳細は「知的財産権の保護」をご参照ください。

その他の支援

支援項目 取り組み内容 対象国
開発途上国の子どもたちへのワクチンならびに給食支援 認定NPO法人「世界の子どもにワクチンを 日本委員会」(JCV)が実施する開発途上国の子どもたちへのワクチン支援活動「せかワクぶっく」に当社グループの従業員が参加しています。これは、古本などを寄付すると、その売却代金がJCVに寄付され、ワクチンにかわり、開発途上国の子どもたちに届けられる国際貢献活動です。また、当社の社員食堂では、ヘルシーメニューを1食とるごとに 開発途上国に給食1食が贈られる TABLE FOR TWO(TFT)にも参加しています。これは、認定NPO法人TABLE FOR TWO Internationalが行う支援プログラムで、寄付により提供される学校給食は、子どもたちの飢餓を解決するだけではなく、子どもたちの基礎体力向上と病気予防につながる効果も期待されています。これらは、従業員の意識向上に繋がる取り組みとして積極的に推進しています。 ミャンマー、ラオス、ウガンダ、ルワンダほか
開発途上国の小児緩和ケアへの支援 ミツビシ タナベ ファーマ インドネシア(MTID)は、すべての子ども達に、緩和ケアサービスが平等に提供されることを願い、インドネシアで緩和ケアの先駆者となってきたNGO「Rachel House」への寄付や医薬品の提供などを行っています。この活動を通じて、医療の手が行き届かないジャカルタ郊外の地域で深刻な病気に苦しむ子ども達を支援しています。 インドネシア

これらの取り組みについては、「医療・福祉への貢献」をご参照ください。

長崎大学熱帯医学研究所ケニアプロジェクト拠点(ナイロビ)への支援

医療機関が整備されていない開発途上国では、感染症の重症化により死亡する乳幼児が多く存在します。当社は、ロタウイルス胃腸炎に関する共同研究を行う長崎大学熱帯医学研究所を通じて、同研究所のナイロビ拠点ラボへ実験機器等を寄贈しました。また、次世代の人材育成の一環として、研究者を志す現地ケニアの若者をリサーチインターンとして雇用し、医療施設でのサンプル・データ収集業務、およびラボでの実験業務に従事いただきました。
ナイロビ拠点は、ケニア中央医学研究所の敷地内にあり、P2・P3レベルの施設、分子生物学的ラボ、病害動物ラボが設置され、疫学研究を実施する地域フィールドを合わせると事務チーム7人、共同研究者を含む研究チーム50人のスタッフが活動しています。当社との共同研究は2021年3月に終了しましたが、ナイロビ拠点では引き続きケニアのみならずサブサハラ・アフリカ地域の医療に関する諸課題に対応すべく、アフリカに特有の熱帯感染症ならびに公衆衛生の研究を進めています。加えて、JICA(国際協力機構)とともにアフリカの若者のための産業人材育成イニシアチブやJICA感染症対策人材育成事業等で若手人材の育成を行っています。

ナイロビ拠点ラボ
当社が寄贈した実験機器や備品を使い実験に励む若手研究者

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