田辺三菱製薬のニュースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者等への情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。

ニュースリリース AIを用いてタンパク質結晶構造を評価する技術を確立

2021年12月20日

 田辺三菱製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:上野裕明、以下「田辺三菱製薬」)は、三井情報株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:浅野謙吾)、公立大学法人 横浜市立大学 池口満徳教授、国立研究開発法人 理化学研究所および国立大学法人 京都大学の研究グループと共同で、AIを用いてタンパク質結晶構造を評価する技術であるQAEmap(Quality Assessment based on Electron density map)を確立(以下「本研究」)しました。

研究成果のポイント
  • AIを用いてタンパク質結晶構造をアミノ酸単位で評価する技術であるQAEmapの確立
    • (アミノ酸単位でタンパク質結晶構造を機械学習することで、細かい単位での評価ができる。全体構造ではなく、局所構造評価ができることが利点)
  • 低解像度データからの構造解析で、特に構造決定が難しいループ領域の構造決定*1に適用できる
  • 創薬研究での課題を、アカデミア、IT企業、製薬会社が一体となって取り組んだ産学連携の成果

 タンパク質の立体構造は、X線結晶構造解析あるいはクライオ電子顕微鏡によって原子レベルの構造決定がなされますが、データの解像度が構造決定の確度に大きな影響を与えます。タンパク質の立体構造は、薬剤候補化合物と標的タンパク質との結合様式を見る創薬研究や分子シミュレーション研究の基盤となるため、特に低解像度データからの構造決定は長年の課題となっています。本研究では、公共データベース*2に登録されている高解像結晶構造データを、3D-CNN*3と呼ばれる3次元情報を扱う方法で機械学習することにより、データの解像度に依存しない構造評価ができることを示しました。

 QAEmapを用いることで、低解像度データからでも確度の高い構造が予測できるので、高解像度データを得るために必要な実験回数を削減でき、創薬の時間を短縮することが可能です。また、QAEmapは、タンパク質に結合する化合物の結合様式評価や、近年、創薬分野での利用が急速に広がっているクライオ電子顕微鏡を用いたタンパク質構造解析に応用可能で、タンパク質構造を用いる創薬研究の加速化に貢献すると期待しています。
 従来の実験者の経験や技術に頼って行われてきたタンパク質の構造決定に、AIを取り入れた方法としてさらに発展させていく予定です。
 本研究は、LINC*4の活動の一環として田辺三菱製薬が提案したプロジェクトで実施され、研究成果は『Scientific Reports』に論文掲載*5されました。なお、2022年度もLINCでプロジェクトが継続される予定です。
 田辺三菱製薬は、これからもアカデミアをはじめ製薬他社など、社内外の様々なパートナーとオープンイノベーションを進めることによって、創薬の加速化や新たな技術へのチャレンジを進めてまいります。


  • *1 ループ領域の構造決定例
    ループ領域の構造決定例
  • *2 Protein Data Bank(通称PDB。PDB: Homepage
  • *3 Three dimensional Convolutional Neural Network(3次元畳み込みニューラルネットワーク)の略。近年のAIの発展を促した技術の一つ。3D-CNNは画像や動画の中から特徴パターンを見つける等、画像認識や動作検出、音声、信号データにも利用されている。本研究では3D-CNNをタンパク質結晶構造および電子密度データをそのまま入力して深層学習するために用いている。
  • *4 ライフインテリジェンスコンソーシアム(Life Intelligence Consortium)(linc-ai.jp) ライフ系企業、IT企業、大学や研究機関など約70の企業・団体が参画し、医薬品開発などライフ系の課題解決やAI技術の開発に取り組む。2016年11月に発足し、2021年4月からは一般社団法人。田辺三菱製薬からも複数のPJに研究員を中心として参加している。
  • *5 論文名:Machine learning to estimate the local quality of protein crystal structures
    DOI: 10.1038/s41598-021-02948-y
    URL:www.nature.com/articles/s41598-021-02948-y
    執筆者名:Ikuko Miyaguchi, Miwa Sato, Akiko Kashima, Hiroyuki Nakagawa, Yuichi Kokabu, Biao Ma, Shigeyuki Matsumoto, Atsushi Tokuhisa, Masateru Ohta, Mitsunori Ikeguchi

本リリースに関する報道関係者からのお問い合わせ

田辺三菱製薬株式会社 コミュニケーションクロスローズ部 TEL:06-6205-5119

ニュース2021年に戻る

このサイトでは、より良いコンテンツの提供を目的にクッキーを使用しています。サイトの閲覧を続けることでクッキーの使用に同意したことになります。
プライバシーポリシー